『話し合いの場づくり』が事業承継の第一歩

岐阜県 事業承継事例

支援企業の概要

【法人名】A社(仮称)

【代表者】料理人歴35年(55才)

【創業】H22年法人設立

【役員】2名 【従業員】8名(うちパート6名) 【事業内容】飲食店経営(1店舗)

【年商】5000万円 

【強み・特長】 食堂営業および50人までの宴会対応が可能。売上の6割は宴会売上。地元の食材を活かした郷土料理が売り。店舗の立地条件は良好で、建物は8年前法人設立時に新築

【後継予定者】次男(43歳) 4年前から同店舗に勤務しており、現場には慣れてきている。

 

 

事業承継の課題

①事業承継の進め方について、家族間での話し合いがなされていない

②後継者の人材育成に時間がかかる

③後継者が事業引継ぎに対する不安が大きい

 

 

支援内容など

①【事業承継の方向性・意向の確認】

・初回は社長と面談し、新規事業立ち上げるため、2~3年で次男に事業を引き継ぐことを希望される。現社長としては、調理人として、また経営者として後継者の人材育成が課題と考えている。

・2回目は後継予定者と面談したところ、「これまでこの会社を継ぐとかは、全く考えたことがない」と父の考えに驚いた様子で返答があった。

・会社の強みや良好な経営状況、社長の意向をコーディネーターより説明。後継者の今後の人生ビジョンも踏まえると、少なくとも今後10年以内に会社との関り方を決める必要があること、事業承継には5~10年の時間を要すること、などを具体的に説明し、1か月間後継予定者に考える時間を設けた。

・1か月後訪問すると、後継予定者より「承継に向けて前向きに取り組んでいきたい」との返答があり、事業承継計画書策定に進めた。

② 【現状分析】

・会社の強みや特長や事業の将来性はあることから、後継者の人材育成が主要課題と判断。

・一方で後継予定者は、事業引継ぎに向けた不安感が大きかったため、承継スケジュールを当初の3年から大幅に伸ばして、後継者が35才(8年後)に向けて着実に育成していく方針を固めた。

【事業承継計画書の作成と提案】

・現状分析の結果や社長・後継予定者の意向を踏まえて、社内での業務範囲を順次広くしていく事業承継計画書を策定。株式譲渡のタイミングについても、社内の役職に合わせて贈与する計画を提案。

 

 

成果・事業者の声など

①【話し合いの場づくりにより、承継計画をスタートできた】

 上記の後継者の意向確認の後、お正月に家族会議を開き、社長夫人や長男も交えて、今後の引継ぎについて話し合う機会を設けていただき、家族間で承継の方針が固められた。多くの親族内承継において、本件ケースと同様に、親子間での話し合いがなされていない場合が多くみられます。立ち話や業務会議のついでではなく、しっかりと「話し合いの場づくり」を行うことで、お互い冷静に、じっくりと将来の会社の未来ビジョンについて考える機会が得られて、事業承継の第一歩を踏み出すことができた。

②【人材育成の方向性を示すことができた】

 人材育成の進め方について、社長の思いや後継者の考え方をもとに、社内の業務を少しずつ社長から後継予定者に権限委譲していくことを提案。その際に必要となる知的資産の見える化については、後継者を中心に行っていき、現場の問題・課題について、ITツールを駆使するなどして、効率化していくことにも挑戦していく方針が決まった。また、引き継ぐべき知的資産の洗い出しのためにオリジナルのワークシートを作成し、今後、支援機関である商工会を中心に、計画実行をサポートできるツールを提供。